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2012年12月14日 (金)

最近の印象に残っている登記事件 その1

近頃扱った登記事件の中で印象に残っているものを少し挙げておこうと思います。

その1 「法人住民税の均等割額を下げるための減資」

私が今まで扱った「資本金の額の減少の登記」(=減資)といえば、繰越欠損(赤字)を穴埋めするための減資(形式上の減資、無償減資)でした。
しかし、昨今は、長引く不況を反映して、現在の業績の良い会社からでも「法人住民税の均等割額を下げるため」の「資本金の額の減少の登記」をしてもらいたいというご相談がありました。
この手の案件は、もちろん税理士さんとタッグを組んで行うことになりますが、そのときに会社法・商業登記と税法の違いを色々と勉強させていただいた案件でした。

法人住民税(地方税)には、所得がなくても(赤字でも)課税される均等割というものがあります。
この税金は、支払先によって、二つに分かれます。都道府県と市町村です。つまり県税と市税です。
そしてこの税額は、資本金等の金額と従業員数によって決まります。ただし県税分は、資本金等の金額のみが基準です。

例えば、県税の場合
資本金等の金額 1,000万円以下              税額 2万円
           1,000万円超 1億円以下            5万円
以下略

市税の場合
資本金等の金額 1,000万円以下     従業員数50人以下 税額 5万円
                                  50人超    12万円

        1,000万円超 1億円以下従業員数50人以下 税額13万円
                               50人超      15万円
以下略
となっています。

当事務所の関与先の多くの会社は、資本金等の金額1,000万円以下、従業員数50人以下の会社ですので、納める税額は、県税市税合わせて7万円ということになります。

ところが、資本金等の金額が1,000万円を少しでも超過していると、いきなり18万円になります。
そこで、「ほんの少しオーバーしている資本金を減少させて、1,000万円にしたい。そうすれば、年間11万円の節税。長い目で見れば大きい数字になる。」という依頼が来るということになります。

さてさて、ここで問題は、単に、資本金の額の減少をしても、目的は達成しないということです。
なぜか?
まず、旧商法では、「資本の減少」と表現していたものを会社法では、「資本金の額の減少」と表現していることが示しているとおり、会社法になってからは、「資本金の額」というものは、単なる「計数」(計算上の数値)としか考えられていません。
計数ならば、その計数を減少させた場合は、どこかの計数を逆に増加させないと辻褄が合わなくなります。簿記で借方貸方が合致していなければならないのと同じ考えです。
そして、この場合どの計数を増加させるかといえば、同じ払込資本の勘定である「その他資本剰余金」を増加させます。そうしないと、株主資本の合計額が変動してしまいますから。
ただし、一部を「資本準備金」にすると決議した場合には、その決議が優先され、残りの金額が「その他資本剰余金」になります。

  株主資本

   資本金            →─→─→─↓
   資本剰余金
    資本準備金        ←↓
    その他資本剰余金     ←↓

ここまでは、いいのですが、問題は、法人住民税の課税標準は、「資本金等の金額」であって、登記または会計上の「資本金の金額」とは、違うということです。
「等」の文字が付いている意味が非常に問題なのです。
法人税法上の「資本金等の金額」には、貸借対照表上の「資本金」だけでなく「資本準備金」も「その他資本剰余金」も含まれているということです。(法人税法施行令8条)
だから、ただ単に、「資本金の額の減少」をしても、計数の「資本金」が減って「その他資本剰余金」が増えるだけで、法人税法上の「資本金等の金額」には、何の変化もないということになります。

では、どうすればいいのか。
資本金の額を減少して、その他資本剰余金に振り替えて、当該「その他資本剰余金」から「剰余金の配当」という形で株主に払い戻す「有償減資」を行えば、「資本金等の金額」は、減少します。

ただ、これにも、注意点がいくつかあります。
欠損会社の場合は、資本金を取り崩しても、まず剰余金の欠損を穴埋めしなければなりません。
そして、配当後の純資産額が300万円を下回らない限り、「剰余金の配当」ができません。(会社法461条)
ということは、ある程度、繰越利益(利益剰余金)のある黒字会社でないと配当は出来ないということになります。

また、黒字会社の場合、「みなし配当」課税の問題があります。
「その他資本剰余金」からの配当は、株主が資本金として払い込んだお金を株主に返しただけなので、本来、税金は、かからないはずです。
しかし、それでは、利益剰余金があるにもかかわらず、その他資本剰余金から配当すれば、税金がかからないことになり、不公平になります。
そこで、税務では、「資本金等の金額」のうち払戻しに対応する部分を超えて払い戻した額は、利益剰余金からの払戻しとみなす、「みなし配当」課税がされるということになっています。
「みなし配当」の計算式は、つぎのとおり。
                         
資本金等の減少額(A) = (払戻直前の資本金等の額) × (配当により減少した資本剰余金の額) ÷ (前事業年度終了時の簿価純資産額)

払戻額 - (A) =利益積立金額の減少額(みなし配当)

よって、資本金の額を減少して、その他資本剰余金に振り替えて、その全額を配当しても、税務上の「資本金等の金額」の減少額(A)は、資本金の減少額(=配当額)よりも少ないということになります。
したがって、この計算をしっかりした上でないと、「資本金の額の減少」+「剰余金の配当」=「有償減資」をして、資本金の額を1,000万円にしたと思っていても、法人住民税の均等割額の課税基準である「資本金等の金額」は、まだ、1,000万円以上になっていることもあるということです。
また、「剰余金の配当」を行えば、配当額の10分の1を準備金として積み立てる必要もあります。

なんとも考えるべきこと、注意すべきことの多い事案でした。

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